喫煙と歯科の病気


はじめに

喫煙をおこなう器官,それが口腔です。
タバコの猛烈な毒物にまず晒される口の中の影響は意外と意識されませんが,あなたの身体を根本から破壊
するに値するものなのです。

まず,歯への影響を考えましょう。
タバコ煙に含まれる多種多様な化学物質は4000種類といわれます。歯が溶け始めるのがph5.5〜5.7です。
その値を下回る酸性化学物質に晒された場合歯は溶け始めます。
また,喫煙により大小さまざまな唾液腺が影響を受け,唾液分泌能が低下します。そうなると,唾液による自浄
作用・口腔内のphの緩衝能力が低下します。したがって、歯の周囲のプラークが増殖・粘着性を増すことにな
り,そのプラークの中で作られた酸が歯を溶かすことになります。これがいわゆる虫歯です。
普通虫歯になるリスク時間帯は,食事後30分ほどなのですが,喫煙が一日中繰り返し習慣的に行なわれます
ので,喫煙者の場合常に虫歯のリスクが継続されてしまう恐れがあるのです。

次に,歯を支える歯周組織への影響を考えましょう。
歯周病を作る細菌が,歯の周囲組織に侵入して起こる炎症が歯周病です。侵入してきた細菌と戦うべき免疫細
胞たちは,タバコのニコチンにより血管が収縮され血流が失われたため,その防御すべき場所に到達できませ
ん。
また,修復すべき細胞も到達できませんから,治癒の程度も期待できないのです。これに伴い歯を支えている
歯槽骨が失われてしまいます。いくら虫歯のない綺麗な歯を維持していても,歯周病によりその周囲の骨を失
えば,歯は置き去りにされ,やがて抜け落ちてしまいます。歯周病の怖さはここにあり,喫煙者に歯を失う人が
多いのもこのためなのです。
最近の研究では,歯槽骨を吸収する破骨細胞自身をニコチンが活性化させ,より多くの骨を失わせるよう働い
ていることが解ってきています。



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